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真夏乃京都ニ桜花炸裂

きのう南座に行ってきた。
土曜(初日)に昼夜と見て、月曜の一回公演を見て、木曜の一回公演を見たわけです。今回は暑いせいか京都が遠くて、一日二回見るのも帰りが遅くなるのも体にコタエるので、正午開演の一回公演でアフターイベントつき、ということで月曜木曜と選んでみたところ、これが正解でした。

月曜のイベントは「朝香櫻子、牧名ことり、折原有佐」の娘役3人に「恋羽みう、白藤麗華、和紗くるみ」が「リスナーメンバー」という名の賑やかしに登場。この月曜の15分ばかりのイベントが、こんな短時間なのに身も細るというか背筋が冷えるようなイベントになりまして、というのは、この手のトークというのは「素の魅力が見えてステキ」となることが目的です。この「素」ってのは、ほんとうの素じゃなくて演出された素であることがほとんどなのに、この日の娘役トークにはほんとに素が出てた。というかハミ出ていた。「わぁ、見えちゃった〜♪」というよりも「うわっ……見えちゃったよ……」的なものが充満していたのです。もちろん、そっちのほうがファンとしては面白いに決まってますが、でも背筋は凍りました。猛暑の折から、ありがたいことです

なにしろメインの3人が対照的なキャラクターで、

★朝香:どうでもいい質問にはどうでもいい答えを返し、ちょっとつっこんだ質問になると(ってたいしたこともないようなことですよ!)「にこっ?」「うふっ?」「ぽかーん(微笑み)」。昭和アイドル歌手のインタビューをホウフツとさせる。まさにidol。でもその正体は黄金の雌ライオンなのでぐわっときたら一発で倒され食われます。
★牧名:何か一発、変わったことを言ってやろうと狙い続けて目を光らす、美しき猛禽。
★折原:場をなんとか穏当に盛り上げ、かつ無事におさめようと奔走。銀のコヨーテのように。しかし不安と心配と焦りが、時折、表情の中に稲妻のように走る。

いやこの3人の組み合わせの恐ろしさ。舞台上のトークですよ。雑誌やテレビならいかようにも編集できるが(それでも行間からにじみ出てきたりするのだが)、ナマですよナマ! 目の前で! 背筋は凍りますが、手に汗握る(冷や汗握る)すごいイベントだ、と前のめりになりますよ! 娘役のOSK、の名に恥じない現トップ3人娘。

リスナーメンバーってのがどうして投入されたのかよくわかりませんでしたが、入れた気持ちはよくわかる。トップ3人娘だけだったら、私がその場の責任者でも「だ、だれか……何人か呼んでこい若手でもなんでも!」と口走るだろう。でもこの鋼鉄の如き3人を前にして、若手がいったい何をできるであろうか。恋羽さんが「これはイベントなの、なんとか穏当に(ココ重要)盛り上げてお客様に喜んでいただかなくては」と必死に微笑みながらがんばる(が力弱い)ウサギさん、白藤さん和紗さんは「口は災いのもとなのよ……」と貝のように口を閉じようとするヒツジさんヒヨコさん。が、司会者に何か振られると答えないわけにいかず、当たり障りのないことをニコニコと答えるところ、牧名ハンターにすかさず狙われつっこまれ、それ聞いて朝香アイドルは「うふっ?」と笑っているが目は笑っておらず、折原嬢は一生懸命に回収に走る。ああなんという美しき荒きサバンナ。私が今回の南座で、折ちゃんがまた「恋に敗れる美しき年増女」のような役を、大丸劇場に続いてやらされているのに腹をたてるのは、
「折ちゃんは野球でいえば名ショート、ラグビーでいえば名SHみたいな人なんだ! こんなしょうもない役じゃなくて、ちゃんと光る場所で光る役割を当ててやってくれー!」
と思うからです。宝の持ち腐れなんだよー!

そのような状況だったため、トークの内容はほとんど覚えてません。なんか、司会者の話の振りが、トップ3人の微妙に答えづらいような、微妙に地雷に接近するようなものだった記憶があり、ある意味それも「いい仕事」だったのかもしれない。は~、恐ろしかった。

変わりまして木曜日。こちらのアフターイベントは桐生麻耶、リスナーメンバーは桜花昇ぼる(とっぷすたー!)。これがねー、ほんと、見てよかったです。この日に行くことにしてよかった、というか一日公演の時にこの二人にしてくれてよかった、ありがとう。最近いつも座る三階の好きな席ってのがあるんですが、三階だから遠いんだけど、ぜんぜん気にならないぐらい、二人の話がよかった。内容がというより(内容もよかったですが)雰囲気。そして二人そのものが。

桐生さんて人は、案外、フリートーク(出待ちとかサイン会の素のしゃべりじゃなくて、聴衆ありでセリフじゃないことをしゃべること)が苦手っぽい人で、というのも我々としてもきりゅーさんには面白い話を期待してしまい、しかしトークの桐生さんは生真面目で、直球をきちんと真芯で打とう、はみ出さないようにしよう、という人なので、ちょっと期待はずれな感じになるわけです。

しかし! ここに「史上最強のボケ」である桜花昇ぼるが相方で存在することによって、ガ然、桐生さんが自由になれる!のであります。

きのう、桐生さんと組んでる桜花ちゃんは、横山やすしをほうふつさせる「愛嬌たっぷりのボケ」っぷりで(天才を感じた。作為であれはできない)桐生さんをイキイキと光らせ、そして自らも輝いた。桐生さんはフィナーレの黒エンビ、桜花ちゃんはショーのラストは銀の総スパンエンビなのを、その前のシーンの、桐生さんとお揃いの黒エンビに着替えて出てきて、黒燕尾二人組で、桜花ちゃんがどっちかというと、「腰をかがめ」「身振り手振り」「その手振りがふと、揉み手ふうになる」「関西弁」のため、ほんとに漫才コンビみたい。やすきよの時代って、漫才師は青とか赤の背広着てたじゃないですか、そのフォーマル感を、ブラックフォーマルによって再現したというか。

アフターイベントで桜花ちゃんがメインで高世がリスナーだった時というのが、私は聞いてないがけっこうヘビーな話(2008年の民事再生の時の話)を淡々として、高世も淡々と聞いていた、というものだったそうだ。もちろんファンとしては興味深い話であり、それを淡々と話す桜花ちゃんには底なし沼の深さを感じたものですが、行きずりの観客には飲み込めない大きさと重さだったかもしれない(ような気がする。見てないでナンですけど)。

桐生さんの聞き手に登場した桜花ちゃんは、こんどは2003年の解散の時のことを話し始めた。解散する時、劇団を存続させたいと思う派と劇団はこのまま終わらすべきだと思う派があって、桐生さんはどちらかといえば終わらすべき派の側で、存続派は、劇団が最終公演を終えて解散してからも、存続に与しない劇団員たちに「帰ってきてほしい」と言い続けていた。それで何人かの人が還ってきて、最後の最後に(存続の会でやっていきたいと)電話がかかってきたのが桐生さんで、その電話を切ったあと、みんなで涙を流して喜んだ、という話で、これがぜんぜんしめっぽくない、思わず笑うような、しかし「ああよかったねえ」と思えるような話ぶりなんですよ。で、桐生さんも、桜花ちゃんが出てくるまでとは、あきらかにしゃべりの調子も楽しそうで口もなめらかになってるし、思い切ったことも言い始めるし、二人ともかっこよかったなあ。

ここで文句を言いたい。今回の南座公演について。

桐生さんの相方に出てきた桜花ちゃん、ほんとにかっこよくて可愛くて素敵だったんだ。終わって緞帳下がる時、三階で見えやしないだろうに手とかぶんぶん振っちゃったし。そして緞帳がしまりきって思った。一部、二部通しても、このアフターイベントの桜花ちゃんほど桜花ちゃんらしい素敵な場面はなかった。

南座の感想にもちらっと触れたけれども、今回の公演の桜花昇ぼるの使い方に私は納得がいかない。とくに二部。桜花昇ぼるの魅力を、南座という、きっと初めて観る人も多いであろうハコで、全開に見せようという気持ちを感じない。演出家や会社がどう思っているかは知らないしどうでもいい。客は舞台の上だけを見て言わせてもらう。桜花ちゃんの見せ場ってどこよ。そもそも私は二部は全体として好きじゃないし欠陥も多いと思うが、せめてスターが「うわっ、くやしいけどここはカッコエエ……」「うわ……可愛いい……」「きゅーん」とさせてくれたら「歌劇の舞台」として「それもありか……趣味じゃないけどそれもありか……趣味じゃないけど」と歯ぎしりしつつ認めざるをえない(たとえば去年の南座の、レディー・ガガの場面。触るのもイヤなぐらい嫌いな世界だが、あそこの真麻はくやしいけどかっこよかった。あ、でも高世はダメだったな。場面の芯の男役がダメなら、ダメかやっぱり)。

一部も、桜花ちゃん、出てるけど出てるだけというか、去年のシンパリは、娘役はどうしようもない描かれ方だったけど男役は桜花、高世の『至宝コンビ』(この言い方も好きじゃないですが)は、「ま、しょーがねえかこれで。こういうのもアリか」と笑って思えるキャラだった。翻って今年はどうだ。桜花高世桐生、おまけに朝香牧名、どれも「うわ素敵」「きゃー可愛い」とか思えない役させてどうすんだ。

南座を初日に二回見て「誰も美味しくねー」と思ったけどその時は、今の劇団に、私がなりふり構わずおっかけるような贔屓がいないもんで「いいのかねこんなので」とぬるいモヤモヤで済んでいたのが、アフターイベントで桜花ちゃんの魅力を見てその光を思い出して、ほんとだったら本公演でこれ見ないといけないのになんで、とむらむら腹が立ったのであった。オリジナル(一部だって原作があるとはいってもまあ、オリジナルみたいなもんだ)で、スターシステムの劇団で、なぜこうなる。トップスターを素敵に見せてくださいよろしくお願いします。

ふうー(深呼吸)。
このアフターイベント、趣旨としては「過去の南座公演を映像で振り返って、思い出を語っていただく」というもので、その時のメインゲストの劇団員が映像を選ぶらしい。恐怖の娘役デー(違)の時は、2008年レビューinKYOTO2 第二部『ミレニアムドリーム』から『God Blessing』。桐生(&桜花)デーは、2009年レビューinKYOTO3 第一部『桜颱風(さくらたいふーん)』から『燃える夏B』『燃える夏C』。この『燃える夏BC』が。見てたらちょっと冷や汗が出た。私は「映像を見て現実より落ちるなあ、と感じる時は、映像のほうが真実」と思っておりますのですが、……冷や汗一斗とはこのことかと思った。

コメント:1

るーしー 13-08-09 (金) 21:35

興味深く拝読しました

自分は現在「箱推し」状態で、誰を贔屓とかはないに等しい身なのですが、
桜花さんの人間力というか無抵抗・非暴力主義というか、
底なしの全肯定っぷりにはびっくりしています。
あきらかに責任のない嫌なことも駄目なことも「自分が至らなかったばっかりに(涙)」と平然と言ってしまう怖さがあるので、それがトップの責任なのか、個人の資質なのか、計り知れない人物だと思っています。

願わくば、その底なしの素晴らしさを公演のなかで発揮して頂きたいし、それが本道だと思います。

桜花さんのいない三越劇場で、高世さんと桐生さんがどんな人間力と芸を見せてくれるのか
すこーし楽しみにしておきます。

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