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指原莉乃座長公演@明治座 その3・すじの話

明治座3

『博多の阿国の狸御殿』のあらすじはこんなん。


舞台は京都。太閤秀吉の治世。
狸チームがいる。狸の親分(極道)、用心棒、メス組。メス組はみなしごの狸たちで、親分が拾って育ててくれたのである。メス組のみんなは、ガラは悪いが侠気に篤く、親分を親と慕っていて、親分のために稼業に精を出す。街道筋で遊女に化けて人間をたぶらかし、枕ドロするのだ。狸にとって人間は敵。メス組のタヌ娘たちがみなしごになったのだって、親が人間の仕掛けたワナにかかったとか、猟師に狩られたりとか、車にひき逃げにあったからとかしたからだ。人間を騙して金品巻き上げるのは、とーぜんの仕返しである。

『博多の阿国一座』チームがいる。これは人間の、娘歌舞伎の一座と、座頭に番頭。故郷が戦乱や飢饉で食えなくなったので、一座を組んで全国を巡業して回っている。そこで稼いで故郷に仕送りしている。

この阿国一座が、京都にやってくる。人間に化けて見に行ったメス組のキヌタ。葉っぱを金に変えて売店の土産物をごっそりだまし取ったりしながら、ついでに見た一座の舞台に心を奪われてしまう。メス組の中でもお祭りが大好きでお祭りといえばいつでも真ん中で大騒ぎしていたキヌタ。「こんなきれいなものオラ見たことねえダ……!」(こんな方言は使わないが)もう、阿国一座のことしか考えられない。とくにセンターで歌い踊る“博多の阿国”がきれいで可愛くて……「オラもあんなふうになりてえダ!」(だからこんな方言じゃないが)

売店でせしめた戦利品を仲間たちのお土産に帰る。帰るんだけどどうしてもあのステージが忘れられない。博多の阿国ちゃんが忘れられない。人間に化けて阿国一座に入団する!と宣言。メス組の仲間たちは「人間なんて敵だろ!」「父ちゃん母ちゃんをワナにかけたのは誰だよ!」「裏切るのかよキヌタ!」って大騒ぎ。でもどうしても行く!と駆け出すキヌタ。「あんなやつほっとけよ!」みんなキヌタがいなくなるのがイヤなのに、強がって平気なフリをする。

人間に化けて一座の入団試験を受ける。祭りは好きだがダンスも歌もやったことないので一次試験の課題(ラインダンス!)にもまったくついていけない。けど狸の化け力でなんとか合格を果たす……んだけど狸だということがバレて捕まってタヌキ汁にされそうに……! 人間は人間で狸に恨みがあったのだ。「うちの畑はいつも狸に荒らされてたんだ! こんなやつはさっさとタヌキ汁にしちゃえばいいんだ!」(←ココ、松岡菜摘渾身の演技)

そこにやってきた阿国。「可哀想に、狸のしたことじゃないか。逃がしておやり」。えーっ阿国どうして! でも阿国ちゃんという人は、美しくてスターで、さらにそういうやさしい子なのである。キヌタを逃がしてやりに外に出て、しばし語り合う二人。実は阿国も岐路に立たされていた。一座の芝居を見た太閤秀吉に気に入られて、お城へ妾(そばめ)として上がれと言われているのだ。相手は日本で一番の権力者。断ったりしたらどんなことになるかわからない。

阿国ちゃんは、みんなのために妾に上がるという。そんなことなんて、今までの苦労にくらべたらなんでもない。でも、
「いちどでいいから、恋をしてみたかったなあ」
月に照らされて、阿国ちゃんは笑いながら言うのだ。今まで恋をしたことがなくて、恋ってどんなものか知らなくて、恋をすることに憧れていたけれど……もう恋をすることも許されないんだね、と。

ここでキヌタに火がつく。仲間のもとに取って返して、阿国のために太閤秀吉と戦おう!と言う。言うけどそんなもん取り合ってもらえない。ふつーに考えてムリだろそれは。おまけに、間の悪いことにちょうど狸極道界の抗争が勃発して、阿波の国の全面戦争に参加しなきゃいけない、みんなでそっちに行くぞー!って時なのに。
「だって阿国はいい人なんだよ、私を逃がしてくれた人なんだよ、人間にだっていい人がいるんだ、そんな阿国が今困ってるんだから助けにいかなきゃいけないんだ」
私ひとりでも行く! と駆けていくキヌタ。みんなほんとは行きたいんだけど、親分も阿波に行かなきゃいかんし、どうしたらいいの。でも親分も同じ気持だったんだ。「キヌタと阿国を助けに行くぞ!」の大音声を発し、狸たちも阿国たちのもとに向かうのだ。

最初は秀吉&阿国一座に化けて家来を騙すんだけど、バレて逆に取り囲まれちゃう。一座もメス組もみんな捕まっちゃう。本物の秀吉はカサにかかって「女の子はみんなワシが囲っちゃるでよ〜」。「私は秀吉さまのもとへ参ります……」と言わされてしまう阿国ちゃん。

そこへ一条の光とともにやってきた、白馬にのり白い軍服のキヌタ。ここで太閤勢と狸&阿国一座の戦いの火ぶたが切って落とされる。激しい立ち回りの中、キヌタは阿国を白馬に乗せて、天空へと飛んでいく。チャンバラの中でメス狸の一匹が斬られ、囲まれて絶体絶命のピンチになった時、メス組のリーダー狸が進み出て、「まず私を殺しな! 自分のやりたいことだけやってるんじゃない、金があるならみんなにわけろ。それが天下人ってもんだろ!」

次々と狸たちが、「私を殺せ」「いや私から!」と立ち上がり、「ええいまとめて始末してくれるわ!」とサムライが刀を振り上げた時…………

「待て、刀を納めろ!」
秀吉様がいきなり改心。狸たちの言葉で目が覚めたのです。自分のやってることがアカンことだと気づいて、みんなを許してやります。そして阿国を妾にする代わりに一座にやろうとしていた千両は、そのまま迷惑料としてあげると言います。斬られた狸も、キズは浅くて、けろっと治っちゃうのでした。

阿国は、自分を救ってくれたキヌタに礼を言います。それは救ってくれたからではなく、「ほんとうの恋をしてみたい」という夢を叶えてくれたから。そう、二人の間には恋情が芽生えていました。でも、別れなければならない。阿国はこれからも一座で国を巡り続けなければならないし、キヌタは狸だし。でもいつか狸まつりで会おう、と指切りをして再会を約すのでした。阿国はキヌタを一座の舞台にあげて、一緒に歌って踊りましょうと言う。阿国一座に憧れていたキヌタへの、それが最後で最高のプレゼントなのでした。


と、私の目から見た『博多の阿国の狸御殿』の、すごくざっくりしたあらすじまとめ。もちろんここに書いた以外に枝葉がくっついてるのだが、今思い出してみても枝葉はどうでもいいというぐらい、キヌタと阿国、この二人のラブストーリーなのですよ、この話は。それもごくふつうに、自然にやってる。……それってけっこうスゴイことなんではないでしょうか。大多数の男性ファンはどう見るんだろう。ジャニーズネタで薄い本つくる女子的な喜びをそこに見出したりするんですかね? それはないか。女の私から見て、美しい純愛に見えました。(そう見えたのにはちゃんと理由がある。また後日書きます)

本筋、事件が起こってそれが収束する流れは単純で、登場人物も小難しい理屈は何も語らないでまっすぐ行動するだけ、なのに幹が太いというか構図に奥行きがあるというか、「ドラマを見せてもらいました」と思わせる。前半(キヌタが阿国一座にもぐりこもうといろいろやってるあたりまで)睡魔が来たけど、それは「この芝居の世界をお客さんに周知させよう」という説明の場面、ドラマが始まる前、だったからではないでしょうか、今思い返すと。“物語世界をわからせる”のにいちばん安易な方法は、役者に説明セリフを言わせる、であるが、この芝居には説明ゼリフや回想シーンなんかなくて、現在進行形の芝居で“彼らをとりまく環境”を客にわからせてましたからね。どーでもいい場面、というのがないんだ。横内謙介って人の芝居を私はひとつも見たことがなかったんだが、これはスゲエなあと思った。ただそこがちょっとテンポゆるめだったのと、メンバーのセリフのメリハリがはっきりしなかったのが相まって眠気が来たんだろう。

後半からはテンポアップして、狸は斬られて死にそうになってるし、阿国はエロ親父の秀吉に「私を抱いてください」とか言わされるし、狸も一座もみんなまとめてお手打ちされそうだし、どどどどーなるのこれから、どうやって話が収まるの、とドキドキするような展開になって、そしていきなり秀吉さまがコロッと改心して、いきなりハッピーエンドになるというこの流れ。いやー、これはすごくプロっぽい終わり方だと思ったなー。古き良き時代劇!って感じした。「いきなり、んなバカな(゚Д゚)」で大団円という(『若様隠密道中』もソレに近いもんがあった)。何も新しいやり方なわけじゃないけど、私はこのラストでいちばん「うわ、明治座らしいいいラストだー」と感心したのだった。

(つづきます)

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