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『LEGEND 愛の神話』inたけふ菊人形

前の劇場が取り壊され更地になってしまうと、もうすっかり前の記憶も更地です。新しい劇場は、ロビーの感じとか、和歌山市民会館みたい。中もまさにそんな感じなんだけど、幕があいて照明が入ると松竹座みたいだった。舞台装置がここしばらくの松竹座公演を担当してる人だし、電飾や照明もホールのきれいさに相まって照度が高く、あと客席からの舞台の高さも似ていて、真ん中には高世麻央さまが立ってるし、ぼーっと見てると松竹座と変わりない感じです。ただしピンスポットの当て間違いなどがちょろちょろあって笑う(笑いごとではない)(でもそれが武生)。

『愛の神話』はニコ生で見たよりはマシな気がしたけど、やっぱり生で見ればこその生々しいダメさもあって一回目見終わって「うーむ……」となったが、うーむと思ってもそんなにハラはたたなかったな。なんでかなーと考えると、北林先生はいつでも「これこそ私の美意識、これこそ私の世界」とグイグイくる。それがこっちの趣味と違うとほんとに拒否反応がきて「こんな趣味のわりいもんのどこがいいんだよ!」と怒りが抑えきれなくなるところ、今回はそんなにグイグイこない。肩の力が抜けてるのかしらん。

と思ったけどたぶんそうじゃなくて、肩の力じゃなく、そもそも力が入ってないとみた。

・暗い中から白くてひらひらしてる人の群れからゼウスが出るオープニング→
・堕天使(だけどデウスさまには無関係)の話→
・ルパン三世(と言ってはいかんらしいですよ奥さん)の宝石泥棒→
・ヤマトタケルと白鳥と黒鳥の話→
・デュエットダンス→
・フィナーレ→
・パレードで終わり

っていう構成で、この、すでに見た感というか押入れから出してきた感もたいがいですが、そこはいい。北林先生は、だいたいいつもこんなネタばかりです。それが芸風ともいえる。独参湯というものかもしれん。で、いつもならそれでグイグイくるはず。毎回同じようなネタであっても、いつもならもっと複雑に混ぜて境界線をぼかして化学反応を起こしてふしぎな香りをたたせて客をアチラの世界へ連れていくわよフッフッフ、それがわたし北林佐和子の術なのよ(グイグイグイ)、てなもんです。それがこの『愛の神話』にはない。ただネタを並べてるだけ。でも「暗転は悪」の北林先生ことだから間を有機的につながないといかん、景と景がとろけあい融合させなきゃ! というわけで登場するのが、

★白いひらひらゼウスが退場したら唐突に黄色いひらひら変わり燕尾で歌謡曲歌ってトークして「次は堕天使のコーナーです〜」っていうナゾの司会者みたいな桐生麻耶
★幻想的美形堕天使が流した涙の宝石を取って「ウヒヒ宝石ゲット〜♪」と唐突にルパン三世場面になだれこませる桐生麻耶
★何やってんだからわからないドタバタのルパン三世コーナーを終わらせるためにひとり残って客席に降り、唐突に鳥の話をはじめてヤマトタケル白鳥伝説に苦しそうにつなげる桐生麻耶
★クマソの怨霊みたいな黒鳥のカッコのまま、キンキラ衣裳のデュエットダンスをにっこり迎え入れなきゃならない桐生麻耶

とまあ、ぜんぶ桐生さん。ツナギの苦しいとこ丸投げですよ!
桐生さんは一生懸命です。このザツな構成の欠点をすべて背負って一生懸命。2番手の役者がやらされる仕事じゃないけど、「やるからにはやる!」のが桐生麻耶。でもさすがにルパン三世からヤマトタケルにつなぐ渡り鳥話はきつそう。というか聞いててきつい。ルパン三世から途中で桐生麻耶になる?戻る?あたりが苦しい。先生がここをどういうふうにしたかったんだかわからん。……というか、何かしたかった、ようにも思えぬ。つまり投げっぱ。先生もお忙しいでしょうから投げるのはいいとして(よくねーよ!)それがぜんぶ桐生さんてのも手抜きの上塗り。つなぎの4箇所、桐生さんがやるなら1つが限度だよ。といってどれを選ぶ、となっても困るぐらいどこもしょーもない(ある意味難易度高い)ツナギ役なんだよな……てことは、たとえば虹架とか、たとえば華月、武生だし穂香と下級生娘役でコンビとか、そのへんにツナギ役を振ったとして、震えあがるようなヒドイことになった可能性が。とすると、考え抜かれた桐生さんのツナギ4箇所登板なのか。……ちがうよ!

最初のナゾの司会者みたいなとこ、あれは麻央さまがやるといいかもしれない。あの手のご挨拶は似合う気がする。今回麻央さま全体に(出番のことではなく)仕事してる感が少なめなので、あそこで出ればお客さん喜んだかも。わートップさんじゃー、って。

いろいろ言ってるが去年のYUKIMURAとくらべたら今年のほうがいいかな(そう言ったら怒られた)。去年は盛大に腹が立ち不愉快になったからなー。今年がいいとは言わんけど、去年よりは心穏やかに見られるかも。イスの座り心地もいいしね。ひさびさの黒燕尾の群舞も、使ってる音楽が、シアターBRAVA!でやった『バロン/WonderStage JoyfulJoyful』の、フィナーレ前群舞の曲と同じで、あっちは白燕尾に黒シャツでちょっともさっとしてたのでこっちの黒燕尾のほうが見た目は良い。最後のほうになると下級生が入ってグダグダになっちゃったが、まあやってるのが下級生だからこれから良くなるでしょう。

どこの場面か忘れたけど、麻央さまがすごく美しい、木原敏江のマンガのようにステキなところがあった。堕天使の折ちゃんの顔がきれい(衣裳はなぜああなった)。黒燕尾の桐生さんの、後ろ結んでるオールバック黒髪が、何かに似ててかっこいいんだよなー何に似てるんだっけと「オールバック黒髪後ろ結び」で画像検索したらEXILE系が大量に出てきて「ちがうー(T_T)!」となる。そんなんじゃなくて、古いイギリス映画みたいな……何百年続いたお屋敷の、ミイラみたいな老主人を戴く陰鬱な大家族に仕える執事でさ、絵に描いたような忠実な執事なんだけど実はその家族を影で支配してる、みたいなさ。一瞬でもそういう想像をさせてくれたからよしとするか……でもとにかく桐生さんの便利づかいには強く文句を言っておく。

すう


コメント:3

t-k 16-10-15 (土) 18:31

演劇をとってもストリー展開も起承転結しっかりした納得出来る作品がどれだけあるだろう。ミュージカルも突然踊ったり、歌ったり唐突なものも多い。歌舞伎は魔訶不思議は話の展開です。古典バレエは一部現実世界、二部非現実世界を描いて事が多い。ストリー展開は単純で辻褄が合わない。
私が言いたいのは歌劇・レビューの内容は簡単なものか徹底したレビュー ファンタジーでいいと思っています。
OSKのたけふ公演は1時間の制約の中でオープニング〜音楽劇〜MC〜群舞・ラインダンス・デュットダンス〜フィナーレまで全て網羅しなくてはならない。

依ってMCを桐生麻耶が担ったことは全体の流れに組み込まれていて良かったと思っています。古事記ヤマトタケル話を下敷きにして「白鳥の湖」ごちゃごちゃになっていても折原有佐が「瀕死の白鳥」に見えたし、デュットダンス➡︎ラインダンス➡︎群舞からスキャット➡︎フィナーレもスムーズで良かった。

探せば嫌いな場面、納得いかない場面もない訳ではないけれど60分の制約のなかでおもちゃ箱をひっくり返しいしたような妙な感心とOSK団員17名の熱闘・熱演を感じました。
歌劇レビューの劇は寸劇・ファンタジーで良いと考える。突込みどころ満載でも、豪華絢爛で夢と幻想の中の歌・踊りを楽しめばいいんじゃないかなと甘口であります。

青木る 16-10-15 (土) 19:20

t-kさんコメントありがとうございます。
書いたように、腹は立ちませんがやる気を感じられなくてこの作品はつまらんです。つっこむ気合もわかないし、おもちゃ箱をひっくりかえすほどの覇気も感じませんもので……。武生でローテンションな作品てのはアカンと思います。だからってYUKIMURAみたいなガナリ芝居もカンベンしてほしいところではあります。武生らしいハチャメチャは、継体天皇がやんしきを踊った2007年(高世座長!)みたいなものこそ、だと思います。

t-k 16-10-16 (日) 10:18

ps たけふらしいはちゃめちゃさで腑に落ちました。そうです、レビューはちゃめちゃ大衆演劇的総合芸術であるべき「特にたけふ公演は」。私も前ぶりなく民謡メドレーで踊り、歌い出したのは不意を突かれ「こんななあり」と仰天したし、たけふレビューは特上のB級グルメレビューが良いと思います。大ホール進出に当たって朝香櫻子・緋波亜紀の特別専科を引っ張りだして口上をするとか特別なものも期待していました。確かに「愛の神話」は綺麗に大波小波もなく上手くまとめたなと言う印象は強かった。

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