人を撫でさすり人を殺し

凶器の骨

思えば歌劇の燕尾服ってのも安っぽいものだ。プラスチックのボタンにジレはジルコンのボタン。ジルコンのボタンとはいったい何事だ。しかしこのジルコンひとつで数千円という世界である。バカバカしい。しかし本体の燕尾のボタンがプラだとジレにせめてジルコンでもつけないと見られたもんじゃないかもしれない。つまり服地から仕立てから釦の材質からすべて吟味しきって初めてジレーがシンプルな貝ボタンでももつ、ということか。そんな燕尾服はいったいいくらかかるのかと思うと気が遠くなる。しかし安物をキンキラで飾るようなことをしなくたって充分に美しい骨があるではないか。骨をとりまく絶妙の肉と皮膚とサージのようなふつうの生地と貝ボタンでいいではないか。

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