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歌劇スターを好きになるなんて思ってもみなかったもんで、そんなこと考えたこともなかった、「歌劇スターが歌劇団を退団したのち、いかなることをすれば納得できるのか」。

宝塚をやめた元男役スターなんてのの行先を見れば、だいたいの落ち着き先は決まっていて、ミュージカル女優か舞台女優かテレビ女優か奥さんである。たまに医者になったとか声楽家になったとかいうのもある。振付家もありか。女優が多い。それも舞台女優。売れてるのもいれば売れてないのもいる。できれば売れてほしい。売れないでただそれだけならまだいいんだけど、売れないのを売れようとしていろいろやっていると、もう覿面に、茶渋みたいなものがへばりついていって、ふと気がつくと売れ残った燻製みたいになってしまう。そうなると浮上するのは至難の業だし、浮上するにしても意味が違ってくる。

宝塚は宝塚で有名な劇団でトップともなりゃ知名度もあるだけにかえっていろいろ面倒もあるんだろうが、OSKの「知名度のなさゆえの困難」はたいへんである。知名度ないなんてのはどんなバンドでも小劇団でもある話だけど、OSKの場合、解散以降NewOSKになってから、実情はともかくとして劇団の格が上がったんですよがーんと。なんだかんだ言って松竹座ですから。とかいうと松竹座でやったことが格アゲの原因みたいだけどそれだけじゃなくて、Newになって、近鉄時代に明らかにあった茶渋が落ちた。大貴さんの功績って、OSKを存続させたこと以上に「近鉄時代のあのアクを取ろうとして、そしてほとんど取った」ことだと私は思っている。近鉄OSKがあのまま続いてたらこんなに好きにはならなかっただろう。で、格は上がったんだけど知名度は低かった。すごいギャップなのであった。

そのNewOSKの最初のトップスターとして退団した大貴さんが、はたして何をやればいいのか。成功してくれりゃ何だっていいだろうと思うのだけど、でも望むものすべて成功するとしたら、私は「ミュージカル女優」や「舞台女優」にはならなくてもいい。テレビ女優(って書くとどうも『はぐれ刑事純情派』の脇役みたいだが)のほうがまだいい。でも女優じゃなくてもいい。女優やってもいいけど。って、何を言っているのか自分でもよくわからない。勝手にどうとでも思える他人のことですらこんなふうによくわからないことになったりするのだから、これが自分のことだったらたいへんだろうなあ。あ、でも、自分のことだとしたらできることとできないことがはっきりしてるから選択肢は狭まるのか。でも計算とか語学とかじゃないからできるとできないの線引きはけっこう難しいよな。……なんかますます話は混沌としていく。

いろいろ考えたすえたどりついたのは「私は大貴誠に文化人になってほしい」のだった。文化人という言葉にはあまりよくないイメージがあるが、他にうまく言い換える言葉が見つからないのでここは文化人でいく。じゃあお前の考える文化人というのはどういう人か。JOJO広重みたいな人、である。アルケミーレーベルの社長で、非常階段をやっていて、『生きてる価値なし!』と叫び、スポーツカード界の先駆者で、美しい妻がいて、そして知る人ぞ知るという存在。もちろん大貴さんにアルケミーを引き継げとかノイズやれというわけじゃなくて、こういうふう、になってほしいだけだ。じゃあ、大貴さんが「どういうこと」をやれば「こういうふう」になるのか。……それがわかんないんだ。大貴さんに係数αを掛けると「こういうふう」になる、そのαはいったい何。

しかし年を越して、その端緒がもしかすると見つかるかもしれない。蜘蛛の糸みたいなもんなんだけど、蜘蛛の糸にもなりうるような。もう糸がきらきらと虹色に光って見えます。

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