指原莉乃座長公演@明治座 その1・ガワの話

明治座のガワ

明治座は初めて行きました。
が、入ってみるといつも見てる劇場とほぼ同じである。私がふだん行くのは大阪松竹座と京都四條南座、たまーに新橋演舞場。そのどれも本来の歌舞伎興行じゃなくてOSKのレビュー公演を見にいってるので、「アイドルが明治座に出る」という時に比較がしやすい、というかOSKが松竹座や南座でやってることと、HKTが明治座でやることにどれぐらいの違いが(あるいは差が)あるのか、にすごく興味があり、おまけに、今月アタマにOSKは(会場はドーンセンターっていう500人規模のホールだけど)『狸御殿』をやってたという「どうかくらべてください」状態。まあ比べて見るような人はほとんどいないだろうし、比較にニーズもないと思うが、両方見た者としてはいろいろ面白かったし思うところも多かったのでいくつか書いてみます。

私が見たのは千穐楽だったので、初日明けてからネットに出た舞台写真を先にいっぱい見ることになった。芝居のほうはストレートプレイらしいのでひとまず措くとして、二部のショーの舞台写真。それを見た時正直、

「 工エエェェ(´д`)ェェエエ工 ?」…………と思ったのだった。

このあたりの画像を見てもらうとわかりますが(電飾で飾られた「HKT48」の吊り物。OSKもまったくおんなじような吊り物を使うんよねー)、絵面が……しょぼい……。私がOSKを見ていつも「なんで舞台がこういう絵面にしかならねえんだ!」と不満に思っていた、その不満な絵面と似たようなものがそこに。えええーどうして。歌舞伎をやるための劇場を洋風に使うのがそんなに難しいのか。私は、OSKの舞台の絵面がダメなのは、「1.予算がない」「2.センスがない」だと思ってたから、きっと予算もセンスもあるであろうHKTの興行ならそのへんは軽くクリアしてくれるもんだとばかり思っていたので、ショックを受けてしまったんでした。

で、実際に客席で見てみたら。
やっぱりしょぼかったでした……(´Д`)
(って、こう書いたからといってこの公演がダメだ、ってんじゃないですからね!)
(っていちおう断っとかないとなー)

見ながらその理由を考えてたんですけども、たとえば九州7県ツアーの舞台セットなんかは、置きセットで舞台を狭くすることを逆手に取ったというか、ガチャガチャしてるけど賑やかでHKTの若さとうまくマッチさせている。それにこの高い置きセットの上下動で動きが出るし。

九州7県

明治座でも私はこの感じを出してくると思ってたのだ。あの和風の劇場で和風の良さを活かしてこの感じを出してくるなんてスゴイ! 見たい! ぜったいカッコイイ!と激しく期待してたんです。ああそれなのに。

でも、見てたらわかった。明治座でそれはできんわ。なぜなら盆とセリがあるから。盆が回って一号二号三号とセリが上がり下がりするから、可動域はあけておくか、すぐにどけられるセットしかムリ。こんなデカイのを置いておけないではないか。いや、フィナーレだけでもこれ級のセットをドーンと出してくるぐらいは……ってのは明治座の道具収納力がわからないけど、たぶんムリ。

装置についてはそこで理由がわかった。理由はわかったけど納得はいまひとつできない。というのも、盆やセリの動きがそこまで効果的とも思えなかったから。「おおーそう来るか!」って驚かすとか、「きゃーーキタキタキター!」とアゲてくれる動きだったとか、そこまでを期待しますよ、HKTの興行ですもの。でも、ただ上がって下がって回ってただけだった。

(いや、盆回したりセリ上げ下げするののオペレーションがものすごく大変なのはよく存じ上げています。そもそも、舞台であれらのものが動くというのはすごく危険なことだ。今回も二階席だったから大ゼリが真っ黒な大穴をあけてる横で動きまわってるメンバーの皆さんを見てスゴイなーと思った。AKBグループって、割りとふつーに高いとこでガンガン動いてますけど、あれを見るたびに「ゲネの時とかどんだけ注意されてるんだろう。実際落っこちてケガしたって話は聞かないし、そのへんはたいしたもんだなー」と思っている。とにかく、今回の盆やセリはぐるぐる回ってガンガン上下した。ふつう以上に動いていたのは確かです。それでも、そこにもっと新しい使い方はなかったのか、という贅沢な希望を述べているわけです)

それから照明ね。
なんか薄暗かった。うまく暗さが使える劇場なはずなので、薄暗く感じるってのはソンな気がする。もうちょっと明るい時と暗い時のメリハリがあってもよかったかもなあ。それからもう少し電飾が多くてもよかったんでは。明治座の松平健公演なんかはもっと電飾ギラギラだったような。贅沢いえばムービングも多くしてもらっても……と、いってもそのあたりって、増えるためにはお金が必要なわけで。思ったより特効(キンキラテープが飛び出すとか花びらが降りそそぐとか)も少なかった。けっこうタイトな予算だったんだろうか。今回、ペガサスの宙乗りが芝居のラストにあって、宙乗り宙乗りと簡単に言いますがあれってすっごいお金がかかるそうなんですよ。保険もすごい額になるとか聞いたし、一人が身一つで吊られるだけでも金かかるのに今回は白馬のツクリモノに指原莉乃と宮脇咲良の二人が乗るという豪勢な宙乗りで、こりゃここに予算はみんな行っちゃったのか。シロート考えですが。

その、暗さをうまく使っていたのが、さっしーとさくらたんが二人で歌う『君の名は希望』。セットも秀逸で、要するに「セットがまったくない舞台、のセット」。セットがない舞台って、単に「装置が置いてない舞台」ではなくて、すべての幕や吊り物がひきあげられて裏がむきだしで、そのむきだしの壁は黒く塗られてて材木みたいのがゴタゴタあって、そこに黒い鉄材やロープがある。舞台やる人にとってはふつうに見慣れた景色だが、客にとってはものすごく不思議な空間で、それを舞台装置として使ってしまうってのは、(よくある手かもしれませんが)新鮮で、おまけに歌の世界観に合っていた。ところであのセットは、「単に裏を見せただけ」ではなくて「裏を見せたようにつくったセット」かなあと思ったんだけどどうなんだろ。でもあれだけのものをつくるのはそれこそ金かかりすぎるかなあ。でも「ちゃんとそのためにつくった」と思うぐらい、あそこの絵面は美しかった。あの暗くて黒いセットの中でぽつんと二人が歌い、そのあとばらばらっと他のメンバーが加わって『風は吹いている』に続く流れは、これもよくある手なのかもしれないが、見事であった。よくある手だろうがなんだろうが、見る者の気持ちを動かしてくれさえすればいいのである。

(つづきます)

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