指原莉乃座長公演@明治座 その4・にくの話#2

みなぞー

博多の阿国一座は、阿国のさくらたんをセンターに、兒玉遥、今田美奈、本村碧唯、松岡菜摘、穴井千尋、植木南央、熊沢世莉奈、の8人。プログラム(ここは「筋書」と呼ぶところですね、明治座だから)にはこの順番で書いてあったんだけど、これ序列通りでもないしあいうえお順でもない。なおとせりーぬは一座の「研究生」の役なので最後に書かれたんだとして、ということは公演の役としての並びか。ってことは「博多阿国一座」の序列が、さくらたんの阿国をトップとして、以下はるっぴ、みなぞう、あおいたん、なっちゃん、ちーちゃんと続くわけ? でもそれもオカシイ。芝居を見てたらわかるけど、この一座でははるっぴとみなぞうが男役だ。で、はるっぴはたぶん男役トップスターっぽいが、博多阿国一座は娘役の阿国がトップスターでセンターで、はるっぴは男役トップといえども二番手で、そしてそのはるっぴの相手役らしいのがちーちゃんなんだ。てことはちーちゃんが(阿国を除けば)トップ娘役なのに、筋書きには研究生二人の前に位置してるし。それとも学年順>成績順に名前が並ぶ宝塚歌劇団方式なのかと思ってもあおいたんなっちゃんちーちゃん全員一期生で同学年で、HKTにおける成績って総選挙の順位だと思うからやっぱちーちゃんが頭に並ばないと。いやそれならみなぞうの名前の位置もちがうって話になるぞ。こんなこと気にしてんのは私だけか。文句があるとかじゃなくて、プログラムのテキスト情報を読むのが好きなんです。で、そこに何か意味があるのか考えるのも好きなんです。

この阿国一座のヘナチョコぶりには笑った。イメージとしては「安土桃山時代の宝塚歌劇団」的なものとして設定されている。でも娘役がトップとして君臨してる(出雲の阿国は男装して人気出たわけだが博多の阿国は男装なしの純娘役のようである)という点では男役至上主義の宝塚じゃなくて女役が君臨できる松竹歌劇的かも。このあたりも明治座公演にふさわしい。できればこれ、松竹座でやってほしいんよねー(博多座はもちろんですが)。

で、その「安土桃山の歌劇団ぶり」がヘナチョコ。少女歌劇って“ある程度の型ができてないと成立しない”ことを、この『博多の阿国一座』見て思い知らされた。でもヘナチョコで別にいいんですよこのお芝居の中では。「博多の阿国一座」は「故郷の窮乏を救うために出てきた少女たち」なのがわかっているから、キャッキャキャッキャとノーテンキにいろいろ「舞い踊ったり」している彼女たちが、ヘナチョコであればあるほど可哀想でぐっとくるですよ。少女歌舞伎なんて「芸を売り身を売る」商売であることが、このヘナチョコ少女たちの背景にふっと浮かび上がってくるのだ。まさかそこまで計算して脚本書いてるとは思えないが……計算づくなのか?

(ただし、さくらたんの阿国だけは、ヘナチョコを感じさせない存在感がある。動きは別に他とたいして変わらないのに)

というわけで、この『博多の阿国一座』の面々の、学芸会のような少女歌舞伎っぷりをほのぼのと見ることになるわけですが、知らずに目につくというメンバーが当然出てくる。それが兒玉遥と今田美奈。なんだよ結局男役かよ(男役ズキなもんで)。いやちがう。男役っていってもそんなバリバリに男役なわけじゃなくて、着物を男帯で着て刀振り回すだけ、というぐらいの女の子。でもやっぱり異性装っていうのは目立つんだな。いや、それもちがう。

今田美奈。今回の明治座で“最大の発見”が「みなぞう芝居うめーーΣ(@@!!!」ってことのようだ。それをさんざん聞かされてから実見したところ、芝居がうまいかどうかについては正直言われすぎかもって気がしたが、とにかく「目立つ」。薄暗い舞台の上で何人もの似たような衣装つけた女の子たちがわらわらと動いている中に、一人だけ目につく子がいて、見ればそれは必ずみなぞうである。ま、背が高いからってのもあるんだけど、髪型(男役だが、ワンレン風のロングを後ろで結んで、ルパンの石川五エ門風にしている)、身のこなし(着物で動き回る、ましてアクションつけるってのはとーっても難しい。シロートがやっていちばんボロが出るのがここ)(着物で動くなんてドシロートに近いと思われる今回のメンバーが、全員それほど破綻なくやってたのは驚きであったが。その中でもみなぞうの着こなし身のこなしがいちばんきれいだったということ)、そして声。声が、声質なのか発声のせいなのかその両方なのか、語りで仕事をする人のようなクロウトっぽい声で、叫ぶんじゃないところでもぱーんと聞こえる。その3つによって、知らぬ間に目を惹かれる。それが決して悪目立ちではなく、うるさくなく、でも気になる。

みなぞう、いわゆるわかりやすいアイドル系ルックスじゃないんだけど、そういう人のほうが爆発した時のパワーはとんでもないことになる。にじみ出てくるモード系の趣味といい、ガチッと腰の決まった声や歌唱や立ち居といい、愛犬可愛がってるとこといい、(HKTのファンにはまったくわかんないでしょうが)OSKの桐生麻耶をふと思い出すのであった。こういう人が「次の総選挙ではアップカミングガールズの65位を狙います!(生誕祭時のアンコール前の口上)」というHKTはすごいな。いや、私とてこの明治座見るまで気づかなかったのである。今回オーディションでみなぞうを選んで、なおかつ阿国一座にキャスティングした人はえらい。

(つづきます)(いったいいつまで……)(まだまだ)

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