ジュリエット殺人事件

舞美りらはジュリエット役者じゃない、と書いたけどその一文だけだと「娘役としてダメ」って言ってるみたいなので少し説明する。彼女って本質は「線が太い娘役」ではないか。お姫さまとか可憐な少女とか、一見似合いそうだからよくそういう役をやるけれど、なんかいつも同じである。その役の前に「ふといまいみりらー」ってのが出てくる。体型じゃなくてね。森茉莉が結婚したてのダイアナ妃を見て「太い性格だ」と言い切っていてい笑ったことがあるがそれと同質の太さ。芯が強い、のではなくて芯が太い。そして舞美ちゃんがいちばん得手としてないのは演技で、太い性格なのに線の細い繊細な役やらせるとうまく演じられずどれも同じになっちゃう。今回のジュリエットも事前に「舞美りらがやるならこんなんだろーなー」と想像した通りのものが出てきた。「ああロミオ、あなたはどうしてロミオなの」なんて今どきコントでしか聞かれないセリフを、いっしょうけんめい言ってたけど、やっぱコントみたいだったしなあ。カンタレラのルクレツィアも同じ。ただし途中で人が変わって何かに取り憑かれたようにチェーザレを責め立てはじめたところだけ「人が変わってルクレツィアになった!ルクレツィアの魅力がやっとわかった!」……のだけど本来はそこは「人が変わってルクレツィアではなくなった」とこなのよね(^_^;)。『プリメール王国物語』は、人形の役をやっている時は人形だから心が繊細とか細いとか関係なく人形らしくて魅力的だった(春のおどりのときの人形もよかったな、そういえば)のに、人間の心を取り戻したら火が消えたように魅力が薄れてしまった。結婚式の時にダンナは「あれ……オレが好きだったのはこの子じゃない……けどもう言えない」ってなったんじゃないの、と見ながら笑っていたものです。舞美ちゃんは、美しく繊細な少女は似合わないんですよ。ぱっと見た目は可憐な少女だからって安易にやらせてはいかん。舞美りらをジュリエットにする、と決めたのなら「OSKのロミジュリ」は別なキャラ設定にすればよかったのに。2つの家がいがみあってて両家の子どもが恋愛する、という軸さえありゃロミジュリとして押し通せるんだから。……っていっても劇団員のことをあんまり知らない(だろう)上島先生にそれはむりか。

舞美ちゃんはどういう役が似合うのか。ふてぶてしくてツンケンしてるけど、ほんとは寂しがりの女の子とかな。あ、これ『刑事X』のマリリンか。あれは魅力的なキャラになってた(へんな統合失調症とかいう間違った設定があったけど)。あとはなー『蒲田行進曲』の小夏とか。スカーレット・オハラもまあいいかもしれん。ってぜんぶ宝塚でやってる演目じゃん。とはいえそういう役をヒロインにやらせる作品をすでにやってる宝塚はえらいと思わないわけにいかない(スカーレットは男役がやるけどな)(といいつつ『風と共に去りぬ』も『銀ちゃんの恋』も見たことはない、のでどんなふうになってるのかは知らない)。舞美ちゃんはじゅうぶん見る人の心を動かす芝居をできる。でも役を選ぶ。芝居を見るからには心を動かされたいではないか。だからキャスティングはよく考えてほしい。

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