高世麻央名場面考

『春のおどり』が高世さん名場面集公演だったので、そうかいろいろな名場面があったなあとしみじみ考えた。ひとつの公演に上演時間には限りがあるので、すべての名場面を再演するわけにはいかない。なので、今年の春のおどりから漏れてしまった「高世麻央でもういっぺん見たい場面」。

ひとまず日舞のほうについて、また見たいよーこの場面再演してほしいよー、というのを挙げてみます。「松竹座、南座公演で高世が芯とってた場面」から選びます。高世さんという人は、舞台でパフォーマンスする際、何かを振り切った時に別の顔が見えてくることがあり、その顔こそが醍醐味ともいえるのだが、それはわかる人にはわかるという、ちょっとわかりづらい(かもしれない)魅力だ。今回はそれではなくて、誰が見てもわかるタイプのほうの「名場面」です。

『三十石船』(2006年秋のおどり)
高世、桐生、貴城(優希)の3人の場面で高世センター。『三十石』という上方落語が元ネタ。京都から大阪へ淀川を下る三十石船の船頭。いやー、カッコよかったです音楽といい振り付けといい歌といい。こういうイキでカッコよくて勢いのある場面最近ないよねー。楊と真麻従えてやるといいと思います。

『俵積み唄』(2004年秋のおどり)
「俵積み歌」は2009年京都南座「虹のおどり」の東北地方を中心とした民謡メドレーでもやってたけどそっちとは別。秋祭りの民謡メドレーで、こきりこ節や秋田音頭や越中おわら節などを美しく楽しく舞い踊る、そのクライマックスが「俵積み唄」。田んぼ耕して田植えから稲刈り、脱穀して俵に詰めて大八車に乗せて奉納する、という一連を日舞で表現するんだけど、最後のとことか、知らない人が見たら「うわーっ」となりますよ。高世さんはセンターというか、最後に積み上がった俵に紅白の帯で結ぶ、たぶん「その村でいちばんの豪農の長男」みたいな役どころ。農家なんだけどとにかく豪農で、ふだんは顔も拝めないような人で、お祭りの時とかしか出てこなくて、ものすごく美しいの。で、ふだん土なんか触ったこともないはずなのに、鍬の使い方、腰が入っててすごくかっこいいの。……というようなストーリーが浮かぶような美しさで。唄は若木ちゃんが一人で歌ってたのでここは城月さんでも歌っていただきましょう。声質なら恋羽さんが合ってたんだけどな。

『石部』(2008年春のおどり)
「あなたは石部金吉さん〜♪」の歌に乗って、かっこいい江戸の町人・高世がモテモテな様子をこれでもかと見せてくださいました。高世がチラリと見るだけでそこにいる男も女もダダダーとホレちゃう。ヒゲモジャ(胸毛&腕毛)の浪人とか尼さんとか年増とかミーハー娘とかストーカー娘とか飛脚とかいろんな人が出てきて、ちょっとしたアドリブっぽいことも片隅でできるので下級生楽しいよー。

『恋の鞘当て』(2016年春のおどり)
高世さんが素浪人の伊達男で傘持って踊るの。音楽がすごくかっこよくて、もちろん高世もかっこよくて(衣装や鬘も似合ってたし)、しびれたなあ。これはもういっぺん見たかったなあ。

『場面の名前わからない…』(2008年レビューinKYOT0)
「源氏千年夢絵巻 輪舞曲(ロンド)」で匂宮を演じられました高世さん、薫の想い人である浮舟をちゃっかり頂いて、事後、浮舟の着物を羽織って薫の前に出てくる(オレは浮舟とやっちゃったよー、と語らず見せつける)ところ。……ここは高世が芯になってる場面じゃないけど(薫が「ガーン」とショックを受ける場面ですな)、イヤラシクてよかったです。でもこの場面を再演はムリだ……前後がないとワケわからん。

『大阪で生まれた女』(2006年秋のおどり)
『ハートスランプ二人ぼっち』(2007年春のおどり)
山村若(当時)作・演出作品のフィナーレ前のメドレー場面で、高世さんはこの「大阪ならでは」の曲を素頭の着流しで歌って、それがとてもよかった。この両曲とも、高世の笑顔がとてもかっこよかったのが忘れられない。

今年の春のおどりでは『鏡の夢』という、高世さんが出たことのない場面が、高世さんを芯として再演されてたので、そういうやつはないだろうかと考えてみた。

『道頓堀行進曲』(2006年秋のおどり)
フィナーレナンバー。せり上がって出てくるセンター役で。前の曲でもそうだけど、関東出身でナニワっぽくない芸風なのにもかかわらず、松竹座で大阪っぽい場面をやるととても似合う人だった。それをもういっぺん見たかったなー。

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