越前旅行記

猫とれい

武生で泊まる時は何かと便利だし駅前のパレス……じゃないや名前変わったんだホテルクラウンヒルズ武生を予約するんだけどさいきんはどうも行きたい時に満室なことが多く、そういう時はしょうがないんで鯖江のホテルα1とかになるが何かと不便。なので今年はAirbnbで探してみたら駅近にゲストハウスを発見した。武生にもそんなものができたのか! 去年はなかった気がするけど知らなかっただけかもしれない。で、そこに予約して、当日チェックインに向かったらぴっちりカギがかかっていて呼び鈴押しても出ない。え。入口には「以下の日は予約は承っておりません」みたいな貼り紙がしてあって、その当日の日付も該当している。え。もしかして何かの行き違いだろうかと不安に襲われていたらいっしょにいた永ちゃん(彼女は別の宿を確保済)が、ゲストハウスの隣の店?のようなところに灯がついていてひと気もあるのでガラガラと引き戸を開けて声をかけてくれた。そっちにオーナーが住んでるのかもしれない。

おばさんが出てきてくれる。オーナーではなかったけれど、オーナーのお母さんが友だちだからと電話をかけてくれて、お母さんが来てくれることになった。10分ぐらいかかるから、中で待っていってと言ってくれた。電話をかけてくれたことといい、中で待ってけといい、親切にもほどがある。中には猫が、にょろにょろといる。引き戸をあけたとたんに猫の匂いがぷんとしていたのでいるとは思ったが、3匹いてそのうち1匹はとても寄ってくる、1匹は暗がりでじっとしている、1匹は遠くにいる、各種取り揃えた感じがとても「豊饒の猫」という感じで、入れてもらった「中」は「むかし店やってたの」という、何屋さんだったのかわからないがTOBACCOのカウンターがあり、棚っぽいものが設えられ、ちょっとしたお菓子とかも売ってるような店だったのかもしれない。今はおばさんが集めているという猫グッズとペコちゃんグッズで埋まっている。猫は目の前に2匹出てきてくれたが、たいへん良い猫だった。猫柄の良い猫。扉が開いていても道に飛び出さないそうだ。永ちゃんとふたりで猫をかまう。夜だったせいもあるが、なんか不思議な、夢の国に迷い込んだような、夢のように雑然とした、夢のように猫がにょろにょろしている場所であった。また武生に行った時に、猫缶でも持っていきたい。武生の人の中で一二を争う良い人だった猫のおばさん。

たびねこ

そうしているうちにオーナーのお母さんが来てくれて、カギをくれてチェックインできた。いやチェックインといってもAirbnbで支払いから何からぜんぶ済んでるから、単に部屋に入って荷物を置くだけのことだ。とにかくチェックインできてよかった。永ちゃんと晩ごはん食べて、永ちゃんの宿の前で別れてまた部屋に帰ってくる。本来は2階の和室だったが、隣に男性客が入るということで1階の二段ベッド入り個室の洋室に変えてくれた。窓のない部屋だったけどまあ寝るだけだし、いちおう個室だから電話とかもできるし。Wi-Fiも飛んでますのでLINE無料通話でOSK武生公演の感想を電話でがーがーとしゃべりまくったのだった。

そのOSKのたけふ菊人形公演『Viva la Vida』です。ドーンセンターで見逃してさんざ人の感想だけ聞いてたもんでうずうずしてたんだよおおお。ついに見た。初日初回(本来は前日が初日でしたが台風で順延しましたその初日にも来る予定にしてたけどな)。開演アナウンスの後に暗転でするすると緞帳あがってチョンパ(違)で灯りが入ると桐生さんがいる。そりゃいるだろう。で、最初の歌い出しが、ゆるっと始まるというのか、そのゆるさが都会の大人っつー感じの、「おお桐生麻耶だ」。ほろ苦い旨味とでも言いましょうか。しかし。

三井先生の作品が武生、と聞いた時に、「あの都会的な、ある意味甘さの少ないショーが武生でいったいどうするのか」と危惧したものだが、甘さの少ないというのは最初のその歌い出しのところだけで、ショーが進むに従って、「うわー武生だー」と思ったんですよ。しかしその理由がわからない。どこにも武生色などない。和洋折衷で大河ドラマネタのトンデモ芝居があるわけでもない、やんしきがあるわけでもない、赤青黄色の信号機みたいな衣裳のスパニッシュやラテンがあるわけでもない。やってることはオシャレで大人っぽいというのに、なんなんだろうこの武生感。これ、ドーンセンターで見た時にどんなふうに見えたんだろ。ラインダンスの後だったっけ、白い変わり燕尾の桐生さんが、ゆったりした感じの曲に乗って踊る(歌わない)場面があるんですけど、そこで特に「ああ武生にやってきた」って気がしたんだよなあ。しかし重ねて言うが武生っぽさがどこから来るのか、まだわからない。単に「自分が武生にいるから武生っぽさを感じている」だけなんだろうか。わからん。……と、こう書いてると「武生っぽいのはよくない」と言ってるようですが別にそういうわけではない。このショーに文句があるとするとそこではない。

●ウワサの「バーの場面」。長いとかなんとかいろいろ言われてたが、別に長くなかった。先生のやりたいことよくわかったし。こじゃれたミュージカル(古き良き時代の)のワンシーン、みたいなもんだろう。でも長いと言われる理由はわかる。劇団員がこなれてないんだ。ああいう場面を「一生懸命」やったらダメ、というか抜いてやらないとサマにならないんだけど、あそこで抜きの芝居できるの桐生さん一人だからなあ(城月さんは初日だったせいか、ちょっと力が入ってたように見えた)。あと、華月くんと栞くんのかけ合い、アドリブやめて決まったセリフでもいいと思う(笑)。それで中日過ぎたあたりでちょっとだけ変えて笑い取る、ぐらいで充分かと思います。と、まだまだ課題はいっぱいありますが、それでも、去年の武生の、子役がいっぱい出てくる震え上がるようなサムイ小芝居よりは百倍マシだと思いました!(くれぐれも、へんなアドリブ合戦みたいなことはやらないでね!)

●劇団員おすすめの、娘役中心の場面。ここが私にはつまんなかったです。娘役が中心なだけだった。娘役が魅力的に見えない。ここは作演出の責任じゃなくてやってる側の未熟だろうなあ。ここで娘たちが語るところが福井弁になってるというのが「武生バージョン」で、初日初回はドッカンドッカン受けてました。でも私は何言ってんだか聞こえなくて(福井弁だからではなく、セリフとしてちゃんと聞き取れない)無表情で見てしまった。地元の人が笑ってたから地元の人には聞こえたのか。それからあそこの娘役たちの服装があんまり好きじゃなかった。ふつうのスーツとかワンピースとかでいいじゃん。なんで「歌劇でよく出てくる、片隅でジプシーの女が歌ってるような酒場にいるワンサの女」みたいな服装してんだろ。

●オープニングの実花ももちゃん! モードレッドの髪型で「わーい」となりました。でもオープニングだけでした。

●ロケット前の、ロケットガールズがホットパンツ姿で踊るとこの音楽が超好き。

●ロケットボーイ@栞さな。真面目ないい子なんだろうなあと思う。テーマソングに、レッドカーペットに、フラッグまでつくってもらったんだから、もっと調子に乗ってくれていいよ。というかもっと調子に乗ってくれないと重い。松竹座南座の翼くんは調子乗りすぎだと思ってたけどロケットボーイってのはちょっとは調子に乗ってくれないといかんということがわかった。

●フィナーレの階段降りの音楽が、曲中でぎゅんぎゅんとテンポもリズムも変わるのがとても好き。客は拍手しづらそうだけど。あ、フィナーレの黒金の衣裳、娘役のドレスは一人一人、ちょっと胸元のデザインが変わっていて(個人の工夫かな)、その中では穂花めぐみのデザインがすごく良くて、全員あのデザインにしてくれーと思いました。

●全体に「イヤなところはない」ショーだけど、爆発する場面というものがなかったのが多少物足りなかったかなあ。ロケットもあんまり爽快感なかった(大変そうだと思ったけど)。うー。こういう書き方にするとよくなかったみたいに聞こえるか。そうじゃなくて、OSKはこういうちゃんとした、最低16人規模のショーをきちんとできなきゃだめだと思っているので。角座がお手軽なホームグラウンドみたいなことになりつつある現在、たいへんだろうけど今武生で鍛えられてる下級生は幸いだと思う。

年末に大阪で、年始に東京で『天使の歌が聞こえる』公演が発表になり、桐生、楊がようやく揃い踏みとなってめでたい。楊ちゃんがいると桐生さんが輝く。桐生さんの下にいると楊ちゃんがイキイキする。松竹座でしかこのコンビが見られないって、OSKは劇団を売り出す気がないのかと思ってたよ。