OSKの陰陽師史(その1)

7月のOSK南座公演、『陰陽師』やるんですって、北林佐和子作演出で。
 

そうか、陰陽師か。……思えばここに来るまで長かった、長かったよ! でも、もしかして……いや…まあいいや、とにかくOSKが陰陽師だ。安倍晴明だ。OSKで安倍晴明といえばいろいろありました。ということでOSKの陰陽師史。

基本として、OSKの陰陽師…というか安倍晴明モノにはいくつかの系統がある。

「北林晴明」
「祭田晴明」
「横澤晴明」

(もしかすると私の知らない和倉公演の小芝居とかで別系統の晴明がまだあるかもしれませんが、わかりやすくするために上の三つに絞る)この中で、なんといっても大きな存在なのが「北林晴明」。今に残る、OSKでの晴明像をつくったのがこれ。

2001年『闇の貴公子 源博雅と安倍晴明』

闇の貴公子

近鉄劇場&名古屋&東京で上演。作演出北林佐和子。原作夢枕獏『陰陽師』より。ちなみに、夢枕先生の原作通りのお話ではなく、設定だけをもらって自由にふくらませた感じ。そして、近鉄時代の近鉄劇場公演というのは、全劇団員の半分ぐらいしか出ないけれど、今のOSKにおける松竹公演みたいな位置づけです。この公演のプログラムで夢枕さんが「ミュージカルになるのか?というのが最初の正直な感想であったのだが」と言っておられるが、今から思うと隔世の感がある。陰陽師なんてものすごくミュージカル向きの題材ではなかろうか。でも当時は「陰陽師って!」みたいな感じだった。当節どんな原作だってミュージカルになっちゃってることを考えると、OSKは演劇界では先を行ってたのかも。

(しかし、OSKは1999年に菊地秀行(!)の『魔剣士 黒鬼反魂篇』(!)を同じ北林先生の作演出で上演している。魔剣士ってこういうお話でっせ。

魔剣士
本能寺の変直後、木曾の山中で美貌の剣士・奥月桔梗が二十年の眠りを破った。その行く手に立ち塞がるは、謎の木乃伊男・朱物。日本を魔物の国にせんと企む朱物が狙うのは、西行法師の秘術「反魂の法」―。京を舞台に異人、妖女、忍者、そして死者が乱舞する究極の死闘が始まった。

……陰陽師どころじゃねーし! これはビデオでしか見てないけど、OSKの原作モノといえば丹波哲郎の大霊界なんていうトンデモ原作か、筒井康隆短編小説のトンデモ演出か、とにかくトンデモが目立っており、『魔剣士』はそんな中で「ちゃんとOSKでミュージカル化した意味があった」作品ではあった。その割りには顧みられることがあんまりないが。OSKは演劇界の先を行きすぎていたのか。まあ、同じ北林先生作品として、次の闇の貴公子のほうが明らかに上だからっていうのもあるだろう)

話は戻って『闇の貴公子』。当時、OSKは洋あおいと那月峻のダブルトップ時代で、サブタイトルにあるように源博雅(洋)も安倍晴明(那月)も両方主役。博雅は臣籍降下した皇孫で明るくまっすぐな太陽、晴明はご存じ超有能な陰陽師で屈折した月…って、ありすぎてゲップ出そうな設定ではあるがこういうのは永遠の萌え設定。この主人公二人に、

★晴明の式神たち
★蘆屋道満
★酒呑童子&茨木童子
★葛の葉

が、からんで話は進む。
式神ってのは草花や虫や自然の精霊で晴明のお友だち。ここでは維摩居士、風の精、牡丹の精、タンポポの精、藤の精がおります。晴明のことが大好きでいつもまわりにいる。ちょっとした術が使えたりするけれど、花が咲き花が散るようにポンと去ってまた別の式神が生まれてくるという儚い存在。コメディーリリーフも担当。

蘆屋道満は晴明と同業の陰陽師。実は晴明とは兄弟のようにして育った(!)(←やっぱここは食いつくとこですよ!)。しかしミカドの陰陽師オーディションで晴明に負けて、晴明ったらミカドの公式陰陽師としてブイブイ言わせているので「オレの場所を取りやがって!」という恨みで、摂関家も晴明も追い落とそうとたくらむ。かわいさ余って憎さ百倍。どっかで聞いたおぼえがあります「オレの場所」! そして「兄弟のように育ち、憎しみ合う」……! たまらん! これもまた永遠の萌え設定!

酒呑童子とその妹・茨木童子。北の国からやってきた一族。見た目からいうとロシア系みたいな。差別され仲間を殺された恨みの民、怒りのあまり鬼になり、いずれこの国を滅ぼし鬼の国としたい……って、これもまたどこかで聞いたことある……『鬼の城』じゃん! 鬼の城は確実に闇の貴公子が頭にあってつくられたと思いますが(はやみ先生闇の貴公子の振付に入ってるし)、しかしそもそもこの「鬼の一族モノ」「まつろわぬ一族モノ」ってのも、古典芸能の昔から続く永遠の萌えネタです。道満は、この恨みを抱いた兄妹の鬼を自分の野望を達成するための手足として使っている。道満もけっこう力のある陰陽師なもんで、鬼一族の魂をまとめて手の内に握ってる。だから鬼も「いくらこの国を滅ぼすためとはいえこんなヤツの言うこときくのはイヤだ」と思いながらも逆らえないの。

葛の葉は晴明のお母さんである狐。狐の子だからいじめられてたし、狐の子だから陰陽師としてのパワーも段違いな晴明。でも葛の葉は自分が狐だっていう負い目があるので遠くから見守ってる。

さてこの登場人物たちがどう転がっていくのかというと、
(ものすごくはしょって説明しますが)

博雅と茨木童子が出会って恋におちる。茨木童子は鬼であることを隠して茨姫として博雅とつき合ってるんだけど、博雅が酒呑童子を斬り殺して、茨姫は兄を殺された恨みと悲しみでものすごい鬼になってしまい、晴明と道満のサイキック戦争に茨木童子の鬼パワーが加わってたいへんなことに! さすがの晴明もピンチ! そこに狐の葛の葉が現れてキツネパワーで道満を羽交い締め!「今こそ道満を殺るのよ!」「それじゃ母上も巻き添えになっちゃう」「いいからやんなさい!」「母上ーー(T^T)」。道満が出した龍に博雅がやられそうになってる時、茨木童子は博雅を愛してた時の心を取り戻して一転、龍に立ち向かう。そこに晴明の渾身の術が炸裂。道満は斃れる。葛の葉の魂も、茨木童子の魂も天にのぼる。戦のあと、愛するものを喪い残された博雅と晴明。邪悪なものが消え、静かに世界が明るくなっていく中、幕。

……というような話です。ここに書いてないことだと、茨木童子は鬼活動中にそうとは知らない博雅に片腕を切り落とされて(博雅って強いねえ)隻腕の美女鬼になってるとか、式神たちの活躍と儚い最期とか、酒呑童子と蘆屋道満のルックスが超絶にかっこよかったとか、

茨木童子

道満と酒呑童子

それぞれの思いが重なり合いからみあって泣けたとか、いろいろある。今見たらツッコミどころもありそうだが(ビデオを再生する装置がないので、細部の確認ができない。美しい記憶だけで書いています。唐突にコントみたいな場面が入るのがシツコかったっていうのを思い出した。それから「イリュージョン」が途中にあったんだけどそれはけっこうトホホだった)OSKの作品として「後世に残る名作」なのは間違いない。曲も良かったし。

今のOSKでこれをやるとしたら、というのをちょっと考えてみたので書いてみる。序列は無視して私が「この人にやらせたらぜったい面白くなる」と思った名前を勝手に挙げた。元役の人のイメージを踏襲したものも、がらっとタイプを変えてみたのもあります。

源博雅=楊琳
安倍晴明=城月れい

蜜虫(藤)=麗羅リコ
葩(牡丹)=実花もも
凩(風)=栞さな
彗(タンポポ)=千咲えみ
維摩居士=翼和希

蘆屋道満=桐生麻耶

酒呑童子=華月奏
茨木童子=舞美りら

葛の葉=白藤麗華
藤原道長=登堂結斗

 
 
 

ぜったいムリ!!!

でもさーすげー見たいじゃん? 城月さんと桐生さんのサイキック真剣勝負! それで城月さんが勝つんだよ? 舞美ちゃんが片腕の鬼ってのもたまらんわー。快心の配役は維摩居士の翼だ。この維摩っていつもキックボード乗ってるんだよね。で、式神だけど晴明を見守るようなポジで、闇の貴公子も新闇の貴公子でも吉津たかしという超ベテランがやって老け役みたいに思われてるかもだけど翼がやったら新たな維摩居士ですごいいいと思う。

そう、この『闇の貴公子』は、評判が高かったのか(そりゃ高いだろう、OSKでこれやったんだから)続編が作られることになった。2002年、『新・闇の貴公子』である。その時、OSKは2003年5月を以て解散することがすでに発表されていた。そんな時である。
(つづきます)