銀の薔薇の意味

twitter十戒。1.ほのめかしは書かない。2.何か言いたいことがある時は相手にはっきりわかるように書く。メンションだと相手にうっとうしい場合があるので、お名前をあげて誰にでもわかるように書く。3.舞台の感想は書かない。三つしかないな。1は、ほのめかし発言てのはtwitter界隈に溢れており、たいがい読んでいてみっともない。2も、ほのめかしと同じでみっともない。3は、自分がtwitterで観劇の感想を書く時はたいがい腹を立てている時なので、発言として面白くもないのでみっともない。なので舞台の感想はこちらにのみ書きます。

ABCホールの『シルバーローズ/フェスティバル』。見終わってロビーに出てしゃべっている時に「これを三越に持っていってほしかった」と言った人がいて、あー、それはいい、と思った。まあ、冷静に考えると、二部のショーにおける歌唱がひどいので、これを東京へ持ってっちゃマズイだろうが。よく宝塚ファンの人がOSK歌えるっていうけど、コレはどーなんでしょうか。いやもー手に汗握りましたで! というのも、一部の芝居ではちゃんと歌ってたんですよ真麻里都さん。「おお、歌えてる!」と、つい心に隙ができたところをスコーンとつかれた。2ちゃんねるでよく「チギの歌はひどい」というのを見ますのですが、チギ様と里都様はどっちが上手なんでしょうか。

私の心に隙をつくった『シルバーローズ』ですが、これはよかった。見終わって「やられた」という気持ちがむらむらとわきあがりましたから。ただ、これ、台本には穴がある。「人が死んで天使になる」という、ありえない前提にまずびっくりするが、お芝居でお話なんだから別にそんなことはいい。でもそれならそれで、そういう世界なんだってことはわかるようにしてほしい。オープニングの、スモークの中で白い衣装の真麻の歌とダンス、あれは「天国にやってきたミカエル(天使でこの名前ってのも……。大天使になる前の修行時代か)」なのか「地上に降りた時のミカエル」なのか、別に意味のないただのオープニングなのか。……というようなことも、まあどうでもいいか。私がいちばん「これまずいじゃん」と思うのが、天使のミカエルが人間時代につきあってたマリアに「ぼくはいつまでも見守ってるよ」かなんか言うのが、あれではマリアは一生ミカエルのこと忘れられなくて一生独身を貫き、小野小町のようにまわりの男を不幸にするんじゃないかと思わせる。そしてミカエルのほうがめでたくマリアのことを忘れて、天使学校に入ってきた元悪魔のリリスと「じゃあこちらでよろしく始めますよ」みたいな終わり方じゃないですか。いやこれ、けっこうとんでもない話ですよ。

(なので、これを三越に持っていくのはやはり、まずいかもしれませんです)

でも、見終わってそう思わないですむのが、音楽のおかげで、曲やBGの流れが「一つの劇」になっていて、それも、いい意味での「可愛い、清潔な歌劇」の音で、それを聞いてると納得できてしまうという作用だと思う。音楽は木川田先生ですが、これを見ていて、そしてそれまでに手がけられた芝居音楽を思い出して(『バロン』と『国境線』ですね)、失礼な言い方になるかもしれないけれど「木川田先生って、作曲家というよりも、劇音家(なんていう言葉があるかどうかわからないが)なのだ」と思った。少女歌劇の、劇音家。つまり、作品全体を音でまとめられる人。木川田先生、OSKで芝居が3作目というのがもったいなさすぎる。芝居をお願いしてください、とOSKには強く希望する。

それから、コスプレがうまくいってるところ。アイタタタ、ということがないのはたいへんよい。チラシで見た華月の天使はつまんなかったが、実際の華月の天使は「あーなるほどーこういうのはアリ」と思ったし、悪魔学校と天使学校の制服のジャケットもよかったし(とくに天使学校の白ジャケットに入ってるライン。ウルトラマン……じゃないか……でもそんな感じで、いい感じにアニメチック)、栞さなの悪魔も可愛かったし、あと、「舞台における、現代の若者姿」で、はじめて納得いったよ颯星るいのジーンズ姿。ビジュアルが「若々しい」ので、芝居が青くても(有り体にいってヘタだったりしても)、あんまり気にならない。ベテランがアタタタなコスプレしていたたまれないところにもってきて、芝居が巧みだったりすると、上手いのにさらにいたたまれなかったりして、自分もツライし演者にも申し訳ない。若い出演者の若さがいいほうに出ててよかった。だからこの作品を上級生にやらせてもアカンだろう。上級生には、上級生のための、この程度のクオリティの作品を別に用意してほしい。

(なので、これを三越に持っていっても、案外「いいじゃん」となるかも、という気がする)

この程度のクオリティ、と言ったのは、私はこの芝居は、台本穴だらけでも、今までにあった芝居よりは「良い」と思うのだ。若手だからこそ成功した舞台だったかもしれないが、それなら上級生には上級生への「こういう作品」……って、天使だ悪魔とかいうんじゃなくて、上級生が素敵に見える、美しく清潔なミュージカル、ってのがあるはずだ。……そう、この程度ですら今までなかった、ってのが、劇団員が気の毒すぎる。

(ってことは、くらべる対象が「……」だったから良いといってるわけで、やっぱりこれを三越に持っていくのはまずいか……)

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