不時着の男たち
『愛の不時着』はもう十回ぐらい見ている。いや、なんなら何十回といってもいい。
5ちゃんの不時着スレ見てると「何周目に入った」という言い方で、たぶん全十六回の頭から終わりまでを「一周」と数えてると思われる。私は最初に一周してからは、好きな場所をピンポイントで繰り返して見てるので、見る回数として何十回に及んでるのである。最初は「あの場面は第何話のどのへんだったっけ」と早送りでぎゅいぎゅい見たりしてたがもうすべておぼえた。見る場所は決まっている。今日も三回ぐらい見た。同じ場面(複数)を。いや、もう、出てくる男たちに目がくぎづけで。
とにかくいちばん繰り返して見てるのが「エピソード16」ですよ! 感動の最終回!……とはほぼ無関係!な韓国の会議の場面。
北朝鮮の高官の息子が韓国に不法潜入してるのを捕まえた、それをどうするかという最終の会議であり、集まってるのは韓国側の高官である。これがすごい「韓国の高官」ぽいのよ。いや韓国の高官なんてひとりも知らないけどさ、しかし「うっわーこれだ、これが韓国の高官だ!」とひと目見て納得するもん。日本映画における日本の高官とか(シン・ゴジラとか、こないだの福島第一原発のやつとか)、コントじゃねーかというぐらい、
となりますがこの韓国の高官のリアルさはどうだ! でもそれは結局知らない国のことだからで、韓国人が見たら「コントかよ! 見ちゃいられねー!」だったりするんだろうか。それでもいいの! とにかくwikiで見ても役名も出演者の名前も出てない端役の皆さんの、このホンモノぽさ。私がうっとりと繰り返して見てしまう、たぶんこの場面にしか出てこない高官の皆さんをご紹介しよう。
政治家っぽいおじさん
たぶん与党政治家。最前列のほぼセンターにいるのできっと偉い。官房長官的ポジションか。なにかと細かそうなおっさん。
軍関係
軍関係者2人が並んでおります。相当偉いはず。自衛隊なら幕僚長クラスか(テキトーな想像)。
陸軍
制服からいって陸軍ですね。この人の、「韓国の軍の偉いさん」ぽさたるや。この場面のこの人を最初に見た瞬間から目はくぎづけですよ。
海軍
こちらはネイビー。陸軍がああなら、海軍はこうだぜ! という自信を感じますな。帝国海軍も「海軍は外国に行くので顔がいいのを採った」って森茉莉が言ってたが、それを裏付けるような(って別の国の話だが)ルックス。今はこんなだが、若い頃は美形でならしたとみた。しかし、陸も海も、韓国軍の偉いさんとなればコワモテそうなのに「北の高官の息子かー、ま、相手も下手に出てるしこっちのソンにならへんし返してもええんちゃいますか」的に現実的な発言を2人ともしていて、そのへんが日本映画の高官にみられる「戯画的なあまり、極端なことばっか言い出して見ちゃいられなくなる」ところをサラッと回避している。うまい。
官僚系
外務省か。キャリア官僚みを感じる。政治家だとしても官僚あがり。北朝鮮の弱みにつけこんどきましょか、といういやらしさと軽さがあります。このおっさんにもうなったね。
大韓民国国家情報院
キム課長
私をとろかすこの会議の、説明役をしてたのが国家情報院のキム課長。役名があるし何回も出てくるしシリアスな場面あり笑わせる場面あり泣かせる場面ありの重要脇役。たぶん不時着ファンのあいだでも人気は高いはず。知らんけど。少なくとも私の人気は高い。この人が出た瞬間の「うわっ、これぞ韓国!」という感動。何気に、着てるものの趣味がいいんだよね。
キム課長の部下
この人は16話の会議には出てない、というのもまだ下っ端だから。名前もわからない。ふつーにいい男で、キム課長とのコンビがサイコー、といっても一緒に出てくる場面は数回しかありませんが、その数回がもうたまらん。
この2人の薄い本は韓国ではすでにあるとみた。日本にもあってほしい。読ませてほしい。
北朝鮮側の男
こう見てくると、私がグッときてる男は韓国側ばかりではないか。たぶん、北側の登場人物は「韓国が北朝鮮を描くとどうしても戯画化される」というか、やりすぎ感が強まっちゃうからだと思うんだが、どうか。これも自分が韓国人、あるいは北朝鮮人だったら実感が違うのかもしれぬが。ソ・ダンの叔父さんの役なんて、伊藤克信を見ているようで私は面白かったけど、軍事部長とかはマンガみたいだった。そんな中、北朝鮮側で私をうっとりさせたのは「北朝鮮の高官の息子、の父」。
私服のカーディガン姿と軍服姿のメリハリもステキでらっしゃいました。なにしろ「朝鮮人民軍総政治局長」ですので。
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