荻田浩一の虚無への供物

黄バラ

新宿二丁目のA Day In The Life読書会で『虚無への供物』をやるというからまた読み直して中井英夫の他のやつも読み返してみてつくづく思うのは私は中井英夫の小説は『虚無への供物』以外はそれほどハマらないんだ。『虚無への供物』の何が面白いのか小谷野敦に問われて「笑えるところだ」と答えたけれど小谷野さんにはわかってもらえなかった。すごく上質なユーモア小説だと思うんだけどな。登場人物では藤木田さんが私は大好きで、藤木田さんの「コンガラ、セイタカの二童子来たりて助くとはまた文覚上人の荒行以来の珍事だが、何を言い出すことやら……」とか「電気洗濯機はダメだな、そりゃ」とか、こう書き写しながら吹いてしまって止まらない、けどこの可笑しさはうまく説明できないなー。
 

私は『虚無』は耽美小説じゃないと思うが耽美な部分が皆無ではないから表面上お耽美にはいくらでもできる。おまけに異形性もあるし(ゲイバア『アラビク』の蘭鋳みたいなママとか、三味線弾きのお花婆あとか、藤木田さんもある意味そう)、そこにもってきてユーモアがあるミステリー小説、ときたらこれはまさに、

荻田浩一脚本演出『アンチミステリアス・ロマネスク 虚無への供物』

しかないじゃないですか! なにしろ『虚無』はマニアックなファンが大量にいる。テレビドラマ化されてるが語られることはない(みんな黙ってる)。舞台でも私が知らない幾多の残骸が横たわっているはずだ。へたに手を出すと大火傷するキケンな作品なのだ! でも荻田浩一ならマニアも納得だ。

殺人現場

で、私はこの小説は、舞台化するなら「(少女)歌劇じゃないといかん」と思っていた。この作品に出てくる男は男役がやったほうがぜったいいい。「これを実写にするなら誰をキャスティングするか」は前から考えていて(『虚無』ファンはみんなやってるはずだ)私もノートに書いたりしていたが、メインの役にはまりそうな俳優(男優)がいないんだ。唯一、「藤木田誠=藤田敏八」という「これしかない」というキャスティングは思いついたが藤田敏八もう死んでるし。じゃあ次善の策として吉田鋼太郎、などというのも考えたけどダメだろうなたぶん。

なので、宝塚歌劇団はわからないのでOSKだ。それに荻田先生が『虚無への供物』を歌劇で舞台化するとしたら宝塚はもうありえないからOSKしかないでしょう。

光田亜利夫 楊  琳
奈々村久生 舞美りら 
藤木田 誠 桐生麻耶
牟礼田俊夫 愛瀬 光

氷沼 蒼司 城月れい
氷沼 紅司 華月 奏
氷沼 藍司 翼 和希

氷沼橙二郎 虹架路万
氷沼 黄司 実花もも

八田 皓吉 千咲えみ
鴻巣 玄次 壱弥ゆう

『虚無への供物』って登場人物が男ばっか! 1200枚の長編にもかかわらずセリフのある女が2人しかいないんだよ!(そのうちひとりはほぼ通りすがりでセリフがひとつだけ!)なので男性を娘役にやっていただきました。どうも、世間ではこの話の主人公は氷沼蒼司らしいんだけど私にはどう見ても光田亜利夫だと思うし、アリョーシャ役には楊ちゃんぴったし。舞美ちゃん演じる久生さんと二人で「トンチンカン探偵コンビ」すごくいいじゃん。だけど亜利夫の真の相手役は氷沼蒼司で、それが(男役やってる)城月さんなんてうっとり。八田皓吉はもう思い切って女の人にしてしまう。がーがー関西弁でしゃべるお姉ちゃんにする。他、リストに書いてませんが、三味線弾きのお花婆あはぜひ涼乃あゆちゃんに! 女装した爺いなのに涼乃あゆちゃんが美少女のしつらいで出てきて「三味線は婆あのお花でござい〜」つって、美声で朗々と歌いまくるの。会場は近鉄アート館で、荻田先生、よろしくお願いします。

って、これ書いてたらOSK公式がインスタにアップしたこの画像を見て、

ハンサムガールズ

「虚無への供物・女版」てもアリじゃないかという気がしてきた。『アラビク』はレズビアンバーで、出てくる男は「奈々村久」のみ。主人公は「光田亜利子(ありす)」で氷沼兄弟&従兄弟の藍ちゃんも三姉妹にしちゃって「蒼子、紅子、藍子」。三姉妹となるといきなり横溝正史感が漂うが。

youtubeにNHKでやった『薔薇の殺意〜虚無への供物』があったよ驚いたよ(゜ロ゜屮)屮

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